「自宅を売ってまとまった資金を得ながら、引っ越さずに住み続けられる」。リースバックの宣伝文句は、資金需要と住み慣れた家への愛着の両方に応える魔法のように聞こえます。仕組み自体は正当な取引ですが、その便利さの対価がどこに載っているかを数字で確認してから判断すべき商品です。
仕組み: 売却+賃貸借のセット契約
リースバックは、自宅を事業者(買主)に売却し、同時にその事業者と賃貸借契約を結んで、家賃を払いながら同じ家に住み続ける取引です。所有権は事業者に移り、あなたは所有者から賃借人に変わります。固定資産税や修繕積立金の負担はなくなり、代わりに家賃が発生します。
代償1: 売却価格は市場価格より低い
リースバックの買取価格は、一般に市場価格の6〜8割程度になるとされています。事業者は「あなたが住み続ける物件」を買うため、自由に転売も賃貸もできず、その制約と利回り確保の分が価格から差し引かれる構造です。
つまり市場価格3,000万円の家なら、手にする資金は1,800万〜2,400万円程度。通常の売却との差額数百万円が、「住み続けられる権利」の実質的な購入代金の一部だと考えると、取引の実像に近づきます。まず市区の成約データで市場価格の見当をつけ、提示額が何割かを計算してください。
代償2: 家賃は「相場」ではなく「買取価格の利回り」で決まる
リースバックの家賃は、周辺の賃貸相場ではなく、買取価格に対する事業者の期待利回り(年6〜10%程度とされる)から逆算されるのが一般的です。買取価格2,000万円・利回り8%なら年160万円、月13万円超。周辺の賃貸相場より高くなるケースが珍しくありません。
「売却で得た資金から高めの家賃を払い続ける」ため、資金は想定より早く減ります。受取額 ÷ 年間家賃で「何年住むと受け取った資金が家賃で消えるか」を必ず計算してください。10年前後で逆転する提案も見られます。
代償3: 「ずっと住める」とは限らない
賃貸借契約には2種類あります。
- 普通借家契約: 借り手の保護が強く、原則更新できる
- 定期借家契約: 期間満了で終了。再契約は貸主の任意
リースバックでは定期借家(2〜3年)が使われることが多く、その場合「住み続けられる」のは再契約に応じてもらえる間だけです。契約書のこの1点だけでも、確認せずに署名してはいけません。買い戻し特約がある場合も、買い戻し価格(売却価格より高く設定されるのが通常)と期限を書面で確認してください。
検討前に並べるべき代替案
リースバックが正解になるのは、代替案がすべて使えない場合です。順に潰してください。
- 通常売却+賃貸住み替え: 市場価格で売り、近隣の賃貸に移る。受取額は最大で、家賃は相場並み。「同じ家」への愛着にいくら払うかが論点になります
- リバースモーゲージ: 自宅を担保に借り入れ、所有権は保持。対象物件・年齢の条件がありますが、住み続ける目的なら比較必須です
- 不動産担保ローン・住宅ローンの見直し: 資金需要が一時的なら、売却自体が過剰な手段かもしれません
- 資金需要の正体が住宅ローン返済の行き詰まりなら、任意売却を含めた選択肢を金融機関と話すのが先です
まとめ
- 受取額は市場の6〜8割、家賃は相場でなく利回り逆算。二重に事業者側へ有利な構造
- 「受取額÷年間家賃」で資金が消えるまでの年数を必ず計算する
- 定期借家なら「ずっと住める」保証はない。契約種別と買い戻し条件を書面で確認
- 通常売却・リバースモーゲージとの3案比較を経てから決める
契約内容の確認は、事業者の説明だけでなく、宅建士や弁護士など取引の相手方でない専門家への相談をおすすめします。
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