「1階だから売れないのでは」という不安は、売却相談の定番です。実際、1階は同じマンションの上層階より安く取引されるのが通常で、その意味で通説は正しい。しかし「安い」と「売れない」は別の話です。1階には1階でなければ困る買い手が存在し、その層に届く売り方をすれば、取引は普通に成立します。
価格差の実態
階数による価格差は、一般に1フロアあたり0.5〜2%程度とされ、1階はさらに数%のディスカウントが乗ることが多いといわれます。同じ間取りの中層階と比べて5〜10%程度安い水準が一つの目安です(物件・エリアで大きく変わります)。
売り出し価格を考えるときは、市区の成約中央値を基準に、この階数分の調整を織り込んでください。上層階の成約事例をそのまま自分の基準にすると、高すぎるスタートになります。
弱点の正体を分解する
買い手が1階を避ける理由は、実は物件によって当てはまり方がまったく違います。
- 防犯: 侵入経路になりやすいという懸念。ただしオートロック・防犯カメラ・面格子・シャッターの有無で実態は大きく変わります
- プライバシー: 通行人からの視線。共用廊下や道路との位置関係、植栽の有無次第です
- 湿気・日当たり: 建物の向きと周辺環境次第で、まったく問題ない1階も多くあります
- 眺望なし: これは構造的な弱点ですが、後述の専用庭が代替価値になります
- 水害リスク: ハザードマップ上の立地によっては実質的な論点になります。該当エリアなら正直に開示した上で、建物の対策(電気設備の位置等)を説明材料にします
売る前に、自分の部屋にどの弱点が実際に当てはまるかを仕分けしてください。当てはまらない弱点は、募集図面と内見で明示的に打ち消せます。「1階ですが共用廊下側からの視線は入りません」は、言わなければ伝わりません。
1階を積極的に選ぶ買い手
1階指名買いの層は実在します。
- 小さい子どものいる家庭: 足音を気にしなくてよいのは、下階トラブルの多いマンションで強力な価値です
- 高齢者・階段が負担な人: エレベーター待ちなしの動線
- ペット飼育世帯: 散歩の出入りが楽で、足音問題も回避
- 専用庭・テラス目当て: 戸建て感覚を求める層には、上層階にない付加価値です
売却の訴求は、この層に向けて組み立てます。「1階であること」を隠すのではなく、「1階だからできる暮らし」を写真と文面で先に見せる。専用庭があるなら手入れして撮影する、足音を気にしない生活を文面に入れる、といった具体化です(内見での見られ方も同じ発想です)。
売り方のまとめ
- 弱点を仕分けし、当てはまらないものは明示的に打ち消す
- 当てはまる弱点(水害リスク等)は隠さず開示する。契約不適合責任の予防でもあります
- 1階指名買いの層に向けて、庭・足音・動線を前面に出す
- 価格は階数ディスカウントを織り込んだ現実的なスタートに
「誰にとっても2番目」の物件として売ると苦戦しますが、「特定の層にとって1番」の物件として売れば、1階は十分に戦えます。
まとめ
- 1階は中層階比で5〜10%程度安いのが目安。ただし「売れない」わけではない
- 弱点は物件ごとに当てはまり方が違う。仕分けして打ち消せるものは打ち消す
- 子育て・高齢者・ペット・庭という指名買い層に向けて訴求を組む
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