「当初10年固定・年1%未満」のような固定期間選択型は、変動より安心で全期間固定より安い、ちょうどよい選択肢に見えます。しかしこの商品タイプの本当の姿は「最初の10年だけ大きく割引された変動金利」に近く、割引が切れた後の設計を持たずに契約すると、11年目に想定外の負担増が待っています。
仕組み: 金利は「店頭金利マイナス優遇幅」でできている
銀行の住宅ローン金利は、定価にあたる店頭金利から優遇幅(引き下げ幅)を差し引いて決まります。固定期間選択型の罠はこの優遇幅にあります。
多くの商品では、当初期間の優遇幅が大きく、期間終了後の優遇幅は小さくなる設計になっています。たとえば当初10年はマイナス2%前後、11年目以降はマイナス1%前後、という形です。つまり市場金利が今とまったく同じでも、11年目の適用金利は自動的に1%前後上がることがあります。市場が動かなくても上がる。ここが「固定が終わったら金利情勢次第」という素朴な理解との最大のずれです。
期間終了後の選択肢は実質2つ、どちらも条件は悪化しがち
固定期間が終わると、多くの場合は次のどちらかを選びます。
- 変動金利へ移行(手続きしなければ自動的にこちら、という商品が多い)
- 再び固定期間を選択(その時点の金利水準で)
どちらを選んでも、適用されるのは「縮んだ優遇幅」です。さらに注意したいのは、固定期間選択型には5年ルール・125%ルールが適用されない商品が多い点です(このルールの解説)。期間終了後に変動へ移行して金利が上がった場合、返済額は緩衝なしで再計算され得ます。
「10年後に繰り上げて逃げ切る」計画の現実
固定期間選択型を選ぶ人の多くは「10年の間に貯めて、期間終了時に繰上返済または完済する」という出口を描いています。この計画自体は合理的ですが、実行率を下げる要因が2つあります。
- 10年の間に教育費のピークや収入変動が重なり、貯蓄が計画どおり積み上がらない
- 住宅ローン控除の適用期間中は繰上返済を待つ判断になりやすく、行動が後ろ倒しになる
計画が「絵に描いた出口」で終わると、縮んだ優遇幅の変動金利だけが残ります。
契約前・期間終了前にやるべきこと
契約前: 商品説明書で「当初期間終了後の優遇幅」を必ず確認し、その優遇幅+現在の店頭金利で11年目以降の返済額を試算してください。この数字が「市場が動かなかった場合のベースライン」です。その上で、全期間固定・変動との3案比較をすると、当初金利の安さの正体が見えます(変動と固定の選び方)。
期間終了の半年〜1年前: 自行の継続条件と、他行への借り換えを並べて比較します。期間終了時は借り換えの代表的な検討タイミングで、優遇幅の縮小分を丸ごと取り返せることがあります。損益分岐の計算方法は借り換えタイミングにまとめています。ただし借り換えには審査と団信の入り直しがあるため、健康状態が変わる前に検討する価値があります。
まとめ
- 固定期間選択型は「期間終了後に優遇幅が縮む」設計が多く、市場が動かなくても金利が上がり得る
- 期間終了後は5年・125%ルールが無い商品が多く、上昇が直撃する
- 「10年で繰り上げて逃げる」計画は実行率が下がりやすい。ベースラインの試算を契約前に
- 期間終了の半年前から、継続と借り換えの比較を始める
商品ごとの条件は必ず商品説明書と金融機関への確認で裏を取ってください。
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